「全室スイート」という事で話題を集めているイタリアのベニスをテーマにした『VENETIAN』は、総工費15億ドルをかけ、1999年5月3日にオープンした。3036室の全てがスイート級という。

ラスベガスのほかのホテルの平均的な広さの約２倍、平均700平方フィートもあると言われる敷地内には、高さ90メートル以上のベニスの鐘楼、リアルト橋、サンマルコ広場、またロビーの天上にはヨーロッパの伝統芸術フレスコ手法による宗教画などが描かれている。

またこのホテルは、大型コンベンション施設『Sands Expo Convention Center』に隣接している他、水路やゴンドラなどベニスの街並みを模倣したショッピングセンター『Grand Canal Shoppes』を持つ事でも知られている。

この『VENETIAN』は、1952年に開業し、1996年までこの地に君臨してきた古豪ホテル『Sands』が97年に爆破解体され、99年春に新生サンズホテルとして生まれ変わった物で、経営的には『Sands』の血を受け継いでいる。

1999年の開業時は工事などの遅れもあり、レストランなど入居予定のテナントや客室の一部が未完成という極めて中途半端な状態での「ソフトオープン」（一部施設だけの暫定開業） となってしまったためか、何かと評判が悪く経営的にも不安視されてきたが、その後『Grand Canal Shoppes』などを始めとする各種施設が次々と完成し、2001年以降、経営状態は好転している。
好調な業績を追い風に現在いくつかの増築計画が進んでおり、すべてが完成すると7000部屋規模の世界最大のホテルになる予定だ。

その他客室関連で特徴的なのは冷蔵庫とファックス機だ。他の都市のホテルでは当たり前となっている冷蔵庫が、ラスベガスのホテルには存在していないが、この『VENETIAN』には存在している。ただ、冷蔵庫のサイズがあまり大きくない事と、その中にあらかじめ飲み物が入っているため、宿泊客が食べ物や飲み物を収納するスペースがほとんどないばかりか、あらかじめ入っている物を勝手に動かすと自動的に課金されてしまうシステムになっているのである。

無料アトラクション的なものは特にないが、ろう人形博物館『Madame Tussaud's Celebrity Encounter』（有料）がある。マリリン・モンロー、フランク・シナトラ、モハメド・アリなど、映画スター、歌手、スポーツ選手などの 「そっくりさん人形」約１００体が展示されている。入場料は$13.50。

カジノフロアの２階にあるショッピングセンター『Grand Canal Shoppes』内で行われているゴンドラ乗船も無料ではなく一人$12.50となっている。

そしてバフェを持たないこのホテルにとっての最大のダイニングルームとして多くの宿泊者が利用する『GRAND LUX CAFE』など、ラスベガスナンバーワンのレストラン群を誇っている。なお、このホテルには一般のバフェは存在しないが、日曜日だけ『ZEFFIRINO』が高級シャンペンブランチバフェを開いている。

■『VENETIAN』の前身である『Sands』について　■

旧『Sands』は1952年テキサスの富豪によって建てられた。その後いろいろな者の手に渡り、一時期はあの大富豪ハワードヒューズ氏が所有していた事もあった。

『Sands』は『Flamingo』、『Desert Inn』等と並ぶラスベガス屈指の 「古豪」 ホテルで、爆破解体直前まで使用されていたナイトショーの会場『COPA ROOM』等は特に有名だった。あの「RAT PACK」と呼ばれたフランク・シナトラ、サミー・デイビスJr.、ディーン・マーチン（この３人、実は「オリジナル版」の『OCEAN'S ELEVEN』メンバー。また、この「オリジナル版」のDVDには、当時のラスベガスの「雰囲気」を味わう事の出来る「映像特典」が付いている。）らの競演ショーが長い間ここで行われていたことは知る人ぞ知る有名な話だ。

それほどの伝統を持つがゆえに、爆破解体が決定した際には消滅を惜しむ声が非常に多く、「『Sands』保存説」 すら飛び出したほどだったが、もちろんあえなく爆破解体されてしまい今日の『VENETIAN』が誕生した。