まず初めに、波瀾万丈の歴史を引きずる『STRATOSPHERE』の経歴から紹介したい。
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今日の『STRATOSPHERE』の前身である『VEGAS
WORLD HOTEL』は、長い間苦悩の連続だった。「ストリップ」の中心街から離れているという「立地条件」の悪さが響いてか、なかなか客が集まらなかったのである。そこで思いついたアイデアが「タワー」の建設だった。どんなに遠くからでも目立つようにとの発想から、高さは最低でも1000フィート(約300m)とし、名前も成層圏にまで届くようにと、『STRATOSPHERE
TOWER』とすることにした。
しかし建設が進むにつれ次第に資金難に陥り、1995年2月にその完成を待たずして『VEGAS
WORLD HOTEL』は自らの幕を閉じることになってしまった。
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経営権は個人オーナーだったBOB
STUPAK氏の手から、ルイジアナ州やミシシッピー州のカジノ経営で定評のある『GRAND
CASINO』社に渡り、ホテル名も『STRATOSPHERE』に改名された。
このオーナーシップの交代劇を機会に、老朽化した建物は取り壊され新たな本館棟が建設された。また建設が中断されたままになっていた『STRATOSPHERE』タワーの工事もそのまま引き継がれ、高さ350メートルのタワーは1996年春にようやく完成した。しかしタワー完成後も経営状態は決して芳しくなく、その後何度もオーナーが入れ替わることになる。
なぜ経営が行き詰まるのか。その前に前身の『VEGAS
WORLD HOTEL』が経営に失敗した理由を分析してみる必要があるが、その理由は主に次の3つが考えられる。
一つ目は老朽化した建物、二つ目があまりにも個性的な若手個人オーナーBOB
STUPAK氏のセンスのないカラーが経営のいたる所に出すぎていたこと、三つ目がロケーションの悪さである。
一連の改装で一つ目の問題は解決することになり、二つ目の問題もBOB
STUPAK氏が経営から去ったことでとりあえずは解消した。
問題は三つ目のロケーションだ。これは改装後もそのまま付きまとう問題だが、はっきり言ってこの場所はよくない。まずラスベガスをよく知っている者はこの場所をストリップ地区だとは思っていない。またラスベガスを知らない者はこの場所の存在すら知らないのでここには近づかない。
元オーナーBOB STUPAK氏はそのへんの事情をよく知っていたがために、巨大なタワーをここに建て、この地を目立たせようとしたかったのだろうが、「そんな資金があったならストリップ地区の一等地へ引っ越していた方がよかったのではないか」、というのは多くの業界関係者が指摘しているところだ。とにかくロケーションの悪さは新たに『STRATOSPHERE
HOTEL』となった今でもその経営に重くのしかかっている。
また、タワーそのものも今となってはその集客効果が疑問視されている。なぜなら、ストラトスフィアタワー完成後、新フォーコーナーに48階建ての
「エンパイアステートビル」や「自由の女神」が完成し、さらに1999年、「エッフェル塔」や「凱旋門」が出現したからだ。ロケーション的なハンデはもちろんのこと、建造物そのものの知名度的にもこのストラトスフィアタワーが「エンパイアステートビル」や「エッフェル塔」に勝るとは思えず、相対的な認知度は確実に低下してきている。
このように場所の悪さが大きく影響しているのか、1998年まで倒産劇が繰り返され、建設途中だった新館棟の工事も中断されたままになっていたが、1998年8月ついに大富豪のCarl
Icahn氏が破格値で同ホテルを買取り今日に至っている。
Icahn氏はその後リニューアルを決心。建設途中のまま雨ざらしになっていた新館を完成させるなど、数々の改良を加え、2001年7月、ついに『STRATOSPHERE』の完全復活を宣言した。Icahn氏が手がけた主な改良は以下の通り。
■ 24階建1002室の新館の完成
■ 300席規模のカフェの新設
■ ツアーロビーの新設
■ プールの新設
■ 500席規模の「バフェの」新設
■ 3700席規模の屋外アリーナの建設
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