『LUXOR』は外見だけではなく、中身も大変ユニークな作りになっている。まずエレベーターが世界初の
「斜め昇降エレベーター」 になっており、ピラミッドの4つの稜線に沿って39度の角度で昇降する。
また、ピラミッドの内部には柱が1本も存在せず、1階から30階まで、すべて吹き抜けの広大な空間になっている。このような構造から、客室はピラミッドの外壁の面に沿って薄く配置されており、その結果客室の窓は当然のことながら斜めになっている。
客室から一歩外に出るとそこの廊下はすでにピラミッド内の大空間の中にあり、地階にあるレストランや各施設が見下ろせる壮大な設計になっている。廊下は建物全体が斜めになっているため、自分の足元の下には何もなく、さらには手すり以外の防護ガラスのようなものは何もないため、「壮大な景観」
というよりも、むしろ恐怖さえ感じる。
尚、ここまでに述べてきたようなことはすべて本館ピラミッド棟の6階以上のフロアに宿泊した場合の話であって、1階から5階までの客室の場合はエレベーターも通常の(垂直昇降の)ものを利用することになっており、廊下からの景観もそれほど壮大なものではない。このたび完成した新館
(「East Tower」と「West
Tower」)も斜めエレベーターなどはなく、ごく普通の建物になっている。
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ラスベガスの多くのホテルはカラフルなイルミネーションとともにその姿がゴージャスに浮かび上がるような夜間照明になっているが、この『LUXOR』だけは限りなく暗黒に近い真っ黒な巨体をそのまま不気味に夜空にさらけ出し、ただひとつだけピラミッドの頂点から小さく矢のような
「ピラミッドパワービーム」 を天に向けて発している。このビームの強さは世界一らしく(350KWとのこと)、ホテル側の話によると「400km以上離れたロスアンゼルスからでもこのビームが確認できる」らしい…。
なお、その暗黒の夜間照明だが(ビーム以外は本当に真っ黒)、それでは「遠い場所から認識してもらえず宣伝効果がない」とのことで、98年からは小さな照明ライトを4つの稜線に沿って直線的に配置させそれを点滅させることにした。したがって現在は従来のような暗黒のピラミッドではなく、輪郭部分だけは夜間でも認識できるようになった。
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客室の豪華さなどは特筆すべきほどではないが、家具がエジプト調だったりしてなかなかおもしろい。浴室はシャワーだけでバスタブはない
(新館の部屋にはバスタブがある)。少し高い料金を出せばジャクージ付きのデラックスルームもある。
数年前までは、カジノ内のカクテルウエイトレスの衣装やヘアスタイル(かつら)が古代エジプト調に統一されておりなかなかセクシーで評判が良かったのだが、最近残念なことにそれらは中止となってしまった。つまり今はごく普通のウエイトレス姿になっている。金髪の白人ウエイトレスたちに強制的に「エジプト調黒髪ストレート」のかつらを着用させることは何かと問題が多かったようだ。
また、同じ企業体が運営する『EXCALIBUR』と『MANDALAY
BAY』へは無料モノレールでアクセスすることができるようになり、移動においても大変便利になった。もっとも、ホテル内の位置によってはモノレールを使うよりも渡り廊下を使った方が早い場合がある。
さて余談になるが、阪神大震災の直後、「『LUXOR』は構造的に大丈夫か」とのウワサが一時広がったことがあった。たしかにネバダ州はカリフォルニア州ほどではないにしろ地震がまったくないわけではないし、あれだけの広い空間に柱が1本もないというのは少々不安ではある…。
しかし実際のところは「4つの壁面で互いに支えあっている『LUXOR』の構造は、一般の建造物よりもむしろ強い」との専門家の話もあったりして
(真偽は定かではないが)、とりあえずは心配無用のようである。それでも新館棟や劇場をあとから建設したため、本館ピラミッドの底部の基本構造部分にかなり大きな穴があけられたことは事実で(新館棟や劇場へ本館ピラミッド内から直接廊下を通じて行けるようにしたため、本館ピラミッドの底部に穴があけられた)、その際のダメージが少々心配だ。
ちなみにこの『LUXOR』とは、エジプトはカイロの南方約600km、あのアスワンハイダムの北方約200kmの地点にある町の名前である。古代エジプトの著名な墓がいくつもあることで知られており、紀元前13世紀ごろに実在した、あのクレオパトラに勝るとも劣らない絶世の美女「ネフェルタリ王妃」もこの地に眠っている。これまで日本人にはほとんど知られていなかった町だが、不幸にも97年に起きてしまったテロリストによる乱射事件で一躍その名が知れ渡った。
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